2021年02月10日

獏的太極拳

昨日書いた夢枕獏の小説「獅子の門」の中に、主人公の中国武術家が太極拳を演武する描写がある。非常に納得のいく美しい表現だったのでご紹介。少し省略した文章です。

ふいに、ぴんと張りつめた気が、身体の中に満ちた。
満ちたそのときには、身体は動き始めていた。
ゆっくりとした動きであった。
しかし、その動きがいつ始まったのか、始まったその瞬間がわからなかった。
全身が、何かの球体の内部にいるようであった。ゆっくりした動きのなかに、鋭い刃物のようなものが潜んでいる。空気の中にある、耳に聴こえない透明な旋律を、指先が、掌が、肘が、腕が、全身がなぞっているかのようであった。


演武をみて美しいと感想を述べる青年に「完成されたものは何でも美しい」と返すのも小粋。

私くらいの歳の主人公の中国武術家(むちゃくちゃ強くて、性格が飄々としていて良い)が、格闘センスに飛び抜けた若者と次々出合い、次へ展開する第一巻目の終わりらへんの文章でした。
posted by ゆりか at 16:28| Comment(0) | 日記