天気がいいと外に出たくなりますね。家でひと通り練習と家事を終えて早々に仕事に出ました。まだ時間があります。
このふた月ほどで中村文則を十数冊読みました。彼の描く、少年少女時代の家庭環境に影響される人間の心理、それを通した社会の見方、犯罪や病や独裁者に吸い寄せられるように近づいてしまう精神構造を、ある全体を一つ一つ部位を取り出して解体していくかのように見せつけられました。
長編の中で、R帝国と教団Xはまたちょっと趣向が違っていて、前者はディック的なSF設定の妙があるし、後者も含めて世界の政治のあり方とか、信仰とか、望ましい世の中とはとか、それらを複数人の目線からいくつかの種類に描き出している。
あとがきにも書いていたけど、彼の根底にあるものは、多様性の受容と、共に生きよう、ということに尽きるのだなと。
昨年までの世界的流れでいう多様性には若干違和感を覚えるが、苦しみの中で息苦しさの中で生きる人々に寄り添い、その底に入り込んでなお、共に生きようと宣言できるこの作家には共感する。
神道的、そのままでいい、まずは生きよう、この世は悪くないよ、というのびのびした肯定を感じますね。
私個人がこの作品の中でもしキャラクターとして存在したらどう動くかを想像するに、作者の意図通りには動けない、とも思うけど、彼の描く世界に救われる人は多いと思う。
先日あと数冊ゲットしたのでまだ楽しめる。これを経て、彼が影響されたと思われるドストエフスキーや大江健三郎をまた読みたい。彼を通してまた違う受け取り方ができる気がする。
2025年04月05日
小説のこと
posted by ゆりか at 12:20| Comment(0)
| 日記